日本では“R&B果汁”は10%がウマイ…MISIA、倖田來未、絢香、最強女性R&Bシンガーは誰?

マーティ・フリードマンのJ-POPメタル斬り/延長戦

雑誌版、Web版ともに大反響をいただいている、このコラム。今回は女性R&Bシンガーの三大巨頭を徹底比較します。一番歌がうまいのは誰なのか――元メガデスの伝説のギタリスト、マーティ・フリードマンが斬り込みます。
なお現在発売中の本誌8月号(表紙・戸田恵梨香)では、「アンジェラ・アキ」への愛情と新曲への不満、「スキマスイッチ」「ポルノグラフィティ」のルーツを分析しています。こちらもどうぞ。

今回は新旧3人の女性R&Bシンガーの新曲を聴き比べてみました。MISIAと倖田來未と絢香です。

 なんだけど、この3人の音楽性って本当は、洋楽でいうところのR&Bではないよね。日本では「R&B=歌がうまいボーカル」みたいなくくりで使われているんじゃないかな。この3人は確かに歌はうまいけど、“R&B果汁”は10%くらいです。

 でも、だから悪いっていうわけじゃないよ。たぶん3人ともミシシッピで生まれたような伝統的なR&Bも歌おうと思ったら歌えると思う。絶対歌えるはずだよ。だけど、そんな果汁100%のR&Bを歌っても、日本では売れないじゃん。それに残り90%の部分で、ジャンルの様式美を飛び越えた自由な解釈を表現しているっていうことだから、すごくいいことなんじゃないかな。

 個人的な好みでいうと、一番尊敬するのは倖田來未。テクニック的に歌がうまいのはMISIAかな。MISIAと絢香は、息づかいが聴こえる歌声で、気持ちが伝わってくるところがいい。すごくきれいです。絢香ってMISIAに影響されてそう。

 倖田來未は洋楽でいうとマドンナとビョークを足したような存在です。

 マドンナっぽいのはイメージ面。どっちも、いつも冒険的な新しいイメージを打ち出してくるじゃん。“エロかわ”っていうキーワードも似てるし。だけど僕にとっては倖田來未はマドンナよりエキサイティング。もっともっとカラフルで、味が濃いからです。

 ビョークっぽいのはサウンド面。いつも、その時代ごとの最新のレコーディング技術を活用してます。1つ1つの楽器の音づかいとか、全体的なサウンドの環境づくりとか、本当に新鮮でチャレンジ精神が抜群です。

 新曲『FREAKY』もたぶん5年前の技術では作れなかったはず。うれしかったのは、J-POPにR&Bの味と、さらにヘビーメタルっぽいギターのリフまで入ってること。普通、R&Bの曲にメタルのギターは入れないよね。たぶんR&Bの人はメタルが嫌いだと思うし。オタクな印象が強いメタルだけど、そのセクシーさを表現してくれてます。

倖田來未
『FREAKY』ホンダ「ZEST」CMソング。「僕のヨーロッパツアーでライブがはじまる前に会場で彼女の『人魚姫』を流したら、お客さんからすごい反響でした!」。

 倖田來未がビョークと違うのは、ビョークはエロくないし、日本語でしか書けないことだけど、あんまりかわいくもない(笑)。だからビョークのサウンドに、マドンナのビジュアルも入ってる倖田來未は、超スーパースターです。

MISIAはトレンドを追う必要はない!

 最先端な倖田來未とは逆に5年前でも作れたかもしれないのが、MISIAの新曲『ANY LOVE』です。アレンジ的、サウンド的に全然冒険的していない。でもMISIAの場合は、それでいいと思う。テクニック的に完璧なスーパーボーカリストだからです。新しい音のトレンドを追求する必要なんて全然ないんじゃないかな。


MISIA
『ANY LOVE』古巣BMGから1年ぶりの新曲。「『歌スタ』というオーディション番組で審査員したときに、女の子はMISIAに影響されてるっていう人が多いんです」。

 普通、こんなに超うまいボーカリストって、叫び声で高音をアピールしたり、アドリブを過剰に入れたりしがちじゃん。だけど彼女は、曲の持つ魅力をきちんと理解して、それを伝えるために、どう歌えばいいのかってことを常に意識して歌っています。斬新なサウンドではないんけど、曲自体とボーカルの魅力をじっくりと聴かせるつくりになっていて、これはこれで完璧です。

 絢香の『Jewelry day』は、どんな楽器で曲づくりしてるのかは知りません。彼女のR&Bのイメージからはキーボードを連想するけど、この曲はたぶんギターでしょう。だって70年代にアメリカでヒットしたジェームズ・テイラーっぽいコードの使い方じゃん。19歳とは思えない大人っぽいコード進行の曲だよね。アメリカのR&B系シンガーは絶対この方向には行こうとしないし、周りが行かせないし、行ったとしてもできないんじゃないかな。

絢香
『Jewelry day』映画『ラストラブ』主題歌。「R&B系のイメージが強いアーティストだけど、実はギターの音を聴いて育ったんじゃないかって勝手に思ってます」。
筆者紹介 マーティ・フリードマン
 アメリカ・ワシントンDC出身。世界でアルバム1000万枚を売り上げたメガデスの全盛期のギタリスト。J-POPに造詣が深く、日本語も堪能。現在は東京を拠点に、音楽活動のほか雑誌やテレビで活躍中。日経エンタテインメント!の連載「J-POPメタル斬り」も大好評。公式ページは英語版と日本語版がある。この春のヨーロッパツアーを収録したライブCDと、5月の日本公演を収録したライブDVDを8月22日に同時発売。


http://arena.nikkeibp.co.jp/article/column/20070706/1001406/
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